ユダヤ警官同盟〈上〉 (新潮文庫)

ユダヤ警官同盟〈上〉 (新潮文庫)

ユダヤ警官同盟〈下〉 (新潮文庫)

ユダヤ警官同盟〈下〉 (新潮文庫)

アラスカのユダヤ人特別街の安ホテルで殺されたのは名門の御曹司。

かつて神童と呼ばれた彼は今やただのヤク中で、たんなる殺人事件のはずだったが、

このホテルに住む刑事のランツマンは異常な執念で解決に乗り出すが…。

ヒューゴー、ネビュラ、ローカスのいわゆる「SF3賞」受賞作で

しかもコーエン兄弟による映画化が決まっているとあっては読まないわけにはいくまい。

ところがこれが甘かった。

思わせぶりな文章と背後に広がる闇を感じさせる作りはムード満点なのだが、

文章があまりにも読みずらいのと、

日本人にはまず理解不可能なユダヤ教独特の閉そく感があまりにも重たいのだ。

終わり方も決して明快とは言えず(それ自体がいけないことでは決してない)、

モヤモヤしたまま気が付いたらやっと終わっていたという印象で、

ミステリーというよりは文学に近い。

自信のある人はどうぞ。いつものようにお薦めはしません。

なお、この小説がなぜSFかというと、

この物語ではイスラエルが1948年の建国直後にアラブとの戦争に負けて

すでにないこと、ドイツに原爆が落とされいていること、「満州」という国があることなどの

いわゆる「歴史改変」なされているから。

こうした背景とユダヤ人の歴史への理解がないと読むのはきついかな。