アイの物語 (角川文庫)

アイの物語 (角川文庫)

ロボットが人間を支配している近未来。

各地を旅して物語を聞かせる語り部の「僕」は

美しい少女の姿をしたロボットに囚われの身になる。

アイビスと名乗る“彼女”は、「僕」に

人間とヴァーチャルリアリティ、人工知能との間に生まれた7編の物語を語り聞かせる…。

7編の掌編SF小説を一見、バラバラに配置し、

最終章でそのすべてがつながるという構成がまずいい。

しかもその掌編自体が一つの物語としてよくできていて、完成度に舌を巻く。

テーマはSF小説にありがちなものだし、手法も目新しくはないけれど、

「物語とは何か」「物語の持つ力を再認識させる」という作者の果敢な挑戦は見事だ。

キャラありきの小説が横行する今だからこそ読まれるべき小説。